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■第11話:キングクリムゾンにハマッた!
 キングクリムゾンというバンドは、私が音楽をやる上で最も影響を受けたバンドだと言えると思う。最初楽器を始めた頃はもちろんそんなバンドのことは知らなかったが、友人が貸してくれたレコードの中に彼らのデビューアルバムである「クリムゾンキングの宮殿」があったのだ。大口をあけた人物の絵がかかれているジャケットのレコードである。カンケイ無いが、このジャケットの顔のモノマネをするという宴会一発芸が流行した事がある。イギリスのヒットチャートでビートルズの「アビィロード」を1位の座から引きずり下ろしたというこのアルバムは、ジャケットの顔のモノマネをするのはさほど難しくないが、中身をコピーするのは非常に困難なレコードであると私は思った。しかし、それ以前に、1曲目の「21世紀の精神異常者」を聴いた時、ハッキリ言って訳がわからなかったというのが正直な感想である。ただメチャクチャをやっているだけのように聞こえたりもした。とにかく1曲目を聴いて訳がわからず、他の曲をマジメに聴かずに、芋生君に「この間貸してくれたレコードはあまり面白くなかった」などと感想を述べたりもしたのだ。すると芋生君は「ライブ盤もあるから、それも聴いた方がええで。でもクリムゾンもええけど、ジェフベックの新しいやつの方は絶対に聴かなあかん」と言って、ジャケットを絵に描いて教えてくれた。ジェフベックの「ワイアード」である。
  よし、これは買わなければ、ということでお金が出来たときに早速レコード店に買いに行ったのだ。ところが1軒目が品切れ、2軒目も品切れ、3軒目も品切れで、どこにも置いていない。何と言う事だ、せっかく意気込んで買いに来たのに、モノが無いとは口惜しい。せっかく貯めたこの金で、何かを買わなきゃ気が済まぬ、とはいえロックの初心者で何を買ったら良いのやら、何を聴いたら良いのやら、皆目見当つきませぬ、どうすりゃいいのさこの状況、誰か教えてくだしゃんせ・・・などと喚いていたところ、ふとクリムゾンのライブ盤のことを思い出した。これはキングクリムゾンの「U.S.A.ライブ」というアルバムで、前期クリムゾンの一番最後のアルバムであり、最初期とはメンバーも全然違う。とにかく他に知っているレコードが無かったのでこれを捜したところ、幸いすぐに見つかったので買って帰ったのだ。もしつまらなかったら芋生君に文句を言ってやろう等思いながら恐る恐る聴いたところ、これは完全にやられてしまった。物凄く良かったのである。ハマッたというやつだ。そして改めてクリムゾンのデビュー盤や以降のレコードを聴いてみたところ、最初はわからなかった良さがわかった、というか、単純に「これはカッコいい」と思えるようになったのである。以後しばらくはキングクリムゾン以外は音楽ではない、とさえ思うようになってしまった。まぁ、これはいささか大袈裟な言い方ではあるが、他のロックを聴いてもクリムゾンと較べてどう、というような聴き方をするように、ある程度、なったの確かである。

 この当時は、和光大でも友達と2〜3人で練習(と言えるかどうか定かではない、ただ単に集まって音を出していた、という程度のもの)をやっていたが、牧田君のいる武蔵大の方で、より本格的(と言ってもタカがしれたものだが)に練習をする事が多かった。彼らは私にレッドツェッペリンなどを聴かせて、練習でも演奏しようと試みたが、ギター2人とベースだけでやってみても面白くない。ドラムを手伝ってくれる人間はやがて見つかったが、ロバート・プラント(ツェッペリンのボーカリスト)のように唄える人間が見つからず、仕方がないのでオールマンブラザースバンドのインストの曲や、その他ロック系のインストの曲をやったりした。やる曲が無い時は何時間も延々とスローブルースをやったり、コード2つだけでテキトーにやったりもした。しかしこの時の経験は後から考えると非常に有意義な経験だったと思う。まぁしかしいずれにせよ、とてもいい加減というか、のんびりしたものだった。ただ私自身は、個人的には猛練習と言ってもいい程練習をした。何しろキングクリムゾンがカッコいいので弾けるようになりたくて仕方が無いのだが、クリムゾンの曲はどれも非常に難しいので、そう簡単に弾けるようにはならない。結果として1日に最低でも8時間以上楽器を弾いているような事になってしまった。前に書いたと思うが、面白いことというのは肉体的苦痛はある程度伴っても精神的苦痛は伴わないので、いくらでも続けられるという訳だ。ただ、余りにもクリムゾンにのめり込み過ぎた為、他のバンドをバカにするような傾向が若干あったのも事実であり、これはちょっと良くなかったと思う。

 私がベースを始めた頃は、世の中ではディスコが流行していたが、私はこれが大嫌いだった。人がまじめに一生懸命演奏しているのに、踊りを踊るとは何事だ。真面目に聴かなければ、その音楽の芸術性も理解出来ないではないか。それにやる方もやる方だ。そういう観客に迎合するような態度は何だ、などと思っていた。実際、この当時のディスコは、バスドラが4分音符で鳴っていさえすればあとは何でもいい、みたいなものが多かった。楽曲のクオリティは落ち、色モノが流行しているように思えたのだ。そして、黒人音楽=ディスコのように思い込み、黒人系のモノは好きではなかったのである。こういう傾向も後に変わっていくのだが、その辺のところは次回に。

2004/01/05 戻る